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映像人類学、あるいは坂尻さんへのジャック・タチ映画祭レポート

映像人類学

友人の坂尻昌平さんから新刊を送っていただきました。

『映像人類学(シネ・アンスロポロジー)――人類学の新たな実践へ』
 (せりか書房=刊 3024円)

本書のテーマとは、かつてマリノフスキーやフラハティ、ジャン・ルーシュの時代には確実に存在しながらも近年失われていた人類学と映像の親和を、デジタルな技術革新をバネに奪還しようという試みです。
坂尻さんはこの共同研究に映画学の立場から参加し、本書では「作品解説」の項を執筆、吉田喜重やゴダールの作品を、高速度撮影された思考を改めて文章として展開するかのような緻密な分析をまじえ紹介されています。

しかし、ここでの白眉は何といっても『のんき大将』をはじめとしたジャック・タチ作品の一連の解説でしょう。『のんき大将』とネオレアリズモの類似はつとに指摘されるところですが、『トラフィック』『パラード』まで遠望したうえで、タチをずばり「民族誌映画作家」と規定したのは、ジャック・タチ研究の第一人者ならではのさすがの卓見です。ゴダールなどよりはるかにフランスを体現し、かつ誰よりインターナショナルなタチの曰く言いがたい作風を、最も奥まで解明してくれるキーワードのようにすら思えてきます。

* * * * *

ジャック・タチ映画祭


(以下この記事がいっそう坂尻さんへの私信風になることを、読者諸賢に乞許)

今回の《タチ映画祭》、渋谷に3回かよって全作制覇しました。これからご覧になる方々の参考にもなるような感想をまず幾つか書いてみます。

最新デジタル・リマスター版という同一条件で全作品を鑑賞するという空前の機会に恵まれ、改めて映像を比較し感じたこと――

『プレイタイム』の抜きんでた精細さ。70ミリの「解像度」はやはり圧巻ですね。そこにこめられた執念と自信も。

②モノクロ映像の思いもよらぬ美しさ。補正がグレーの諧調に限定されるためか、映像の新鮮化がカラー作品より際立っている。夜景描写などが好例で、闇とカラスが分離するとかくもニュアンスと印象が違うものなのか!

加えて、白黒映像は観ている側の意識が色彩に引っぱられないため、演者の動作がカラーより鮮烈に認識できて、明らかにサイトギャグには向いているようですね。ジャック・タチがマイム・パフォーマーとしてピークにあった時期の『ぼくの伯父さんの休暇』がモノクロ映画として残っているのは(当人がどう思っていたかは措いて)神のおぼしめしだったのかな?

* * * * *

さて、私が個人的に今回の映画祭で一番の目玉と考えていたのは『のんき大将・脱線の巻』です。オリジナルが日本で公開されたのは1949年、いまや劇場で観た記憶を持つのはごく限られた方々だけでしょう。

封印され続けたこの第1ヴァージョンを初めて観て驚いたのは、村人や興行師が郵便屋フランソワをあざけるその執拗さ、それに反発するフランソワの敵意、つまり米国への対抗意識の激しさです。タチは表現者としての洗練からのちの着色版ではそのあたりのドラマトゥルギーをソフトに丸め、さらに後年のカラー版編集者ソフィー・タチシェフは(自分が知る父親像に沿うよう)抒情性をさらに強調したわけですが、タチの出発点にはある種の過激さが存在したことは予想していた以上の事実でした。

正直私は、カラー版の牧歌的童心が一番の好みですが、好き嫌いは別としてある特殊な時代の、特定の国のある田舎町の息吹きを突風のようなショックで感じたのは今回が初めてです。上記「民族誌」的という形容がすんなり受容できたのは、このオリジナル版の波紋ゆえかも知れません。

さて、その後も民族誌シネアストは歩みを進め、『プレイタイム』でひとつの巨大な都市民族誌を刻んだのち、のっぴきならない事情から過酷な「路上のフィールドワーク」に放っぽりだされる――『トラフィック』は紛れもなくロードムービーですが、土地の人情や主人公の成長よりも物体としての車両や道路がより上位に記録される一種の民族誌であり、情緒的にvoyage云々ではなくフィジカルにtraficと命名された理由はそこにあるのだと改めて気づきました。

* * * * *

私はいま、坂尻さんがふと洩らした「自分がタチと初めて出会ったのは『トラフィック』。そこには自分が映画に求めている全てがあった」という言葉を思い出しています。

私はこの機会にイメージフォーラムの一階に6度陣取りました。いずれも平日ながら観客の入りは最低でも9割、なかでも立ち見まで出る一番の盛況で、その後のTwitter等での反響が最も大きかったのは間違いなく『プレイタイム』でした。

人はジャック・タチに出会い魅了される。そこまではいいとして、お節介にもタチの関連書籍まで作ろうとする輩が出てくる(笑)。そういう人間は、出会いのあとのいずれかの地点で泉下のタチと何らかの約束をかわしたのだろうと思います。その約束とは何か、おそらく当人にもはっきりとは言語化できない。

坂尻さんは(そしてかくなる私も)のっぴきならない事情から今回の映画祭には深く参与できませんでした。坂尻さんは渋谷に足を運ぶことすら叶わなかった。そのことについて思うことの一切を、今は割愛します。

しかしこの盛況の現場を(坂尻さんの分まで)どうにか幸運にも共有できた私からみて、坂尻さんがタチとかわした「約束」は、すでに申し分なく果たされた、と断言できます。

(文責=佐々木秀一)


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日本ではたぶん唯一のファンサイト「ジャック・タチの世界」を運営しています。フィルモグラフィetc.は、そちらをご覧ください。
タチの人生を詳細に描き出した評伝「TATI―“ぼくの伯父さん”ジャック・タチの真実」もヨロシクお願いします。タチ関連の情報があれば、ゼヒお知らせくださいませ。

連絡先:tati@officesasaki.net

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