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速報!「ジャック・タチ コンプリートBOX」をレビューする11

コンプリートBOXバラ

連載第11回 日本版Blu-ray BOXを採点する(最終回)

今回の連載原稿を書くにあたり、必要あって(DVDではなく)ビデオ版の『ぼくの伯父さん』を引っぱりだす機会がありました。そこまでずっとBlu-rayを観ながらの作業だったためでしょう、えらく久方ぶりに見るビデオの映像が、なんだか際立ってザラザラした質感に思えました。このビデオを初めて手にした時は、本当に嬉しかったものなのですがね。

画質といえば、タチヨンこと映画研究家の坂尻昌平さんが以前、初めて映写で観た『ぼくの伯父さん』はモノクロ映画だったと笑っていたのを思い出します。つまりプリントの状態が悪すぎて、完全に脱色していたのでしょう。昔は何事につけ、みんな懸命に想像力でカバーしながら研究対象にアプローチしたものです。隔世の感、というか、モノンクルがモノクロじゃあ全くの洒落ですよね。

ジャック・タチ展2009


1 タチ・アーカイブの進展

ジャック・タチの没後わが国では過去3度、特集上映の波が訪れました。最初が1989年で、このときの目玉は20年ぶりの『プレイタイム』再上映、ラインナップから欠けていたのは『トラフィック』『パラード』。次が1995年で、目玉が『新のんき大将』(カラー版)初公開と『トラフィック』劇場初公開、欠が『プレイタイム』『パラード』。直近では2003年、目玉は『プレイタイム』(新世紀修復版)、欠が『トラフィック』『パラード』。

どうしても何かが落ちてしまうのが歯がゆいところでしたが、この事情は本国でも同様で、これはたぶんスペクタ・フィルム社の倒産とか、『トラフィック』『パラード』がそもそも第三者資本で製作された作品であること、つまりフィルムの権利所有者問題に起因していたのでしょう。

しかしその後、2009年にパリのシネマテークで大規模な《ジャック・タチ展覧会》が催される際に、全作品の上映が予定されていると聞いたとき、「これはもしかすると」と、状況の進展がはっきり予感されました。

今回の映画祭ならびにコンプリートなBOXが実現した背景には、明らかに権利問題がクリアに解決された事実があったはずですが、この流れを地道に進めてきた《フィルム・ド・モノンクル》に、まずは敬意を表したいと思います。

すでに数箇所で触れていますが、このBlu-ray版BOXに添付されたブックレットは、修復上の技術的レポートが充実していて、非常に参考になります。

評伝的アプローチとか構造分析は従来から見かけますが、フィルム自体の解剖報告はフランソワ・エデゥの著作を除けば稀で、こういう方向からの指摘には意表を突かれるものが多い。でも考えてみれば、今回の映画祭ならびにBOX実現の第二の前提条件はデジタル技術の急速な進化で、辛気臭い修復作業をやはり地道に進めてきたヨーロッパの技術者たちの功は絶大です。

冒頭で冗談めかして書きましたが、このBlu-ray版の映像の美しさは筆者のようなロートル・ファンから見ると「犯罪的」なまでで、こんな好条件からファン歴を開始できる若いシネフィルたちが正直羨ましい。

また裏方というなら本邦も同じで、劇場上映は措いてBOXのほうに話を限っても、発売の断を下した日本コロムビアさんをはじめとし、特典映像を含め膨大な作業に当たった字幕翻訳家の方々、ブックレットの面倒な文章を翻訳したスタッフの皆さん、それら全体のチェックに当たった監修の坂尻昌平さんらには、代表できるものならファンを代表して、最大限の感謝を申し上げたいです。ありがとうございました。

劇場上映もそうだったのですが、ビデオやDVDといったメディアも国内市場で一挙に全作が揃ったためしがなかったんですよね。ほんとうに快挙です。

「レビュー」といいながら奇妙な内容の連載を書き続けてきたわけですが、「最後にそれらしく採点でもしろ!」というお叱りの声が聞こえてきそうです。では——★★★★★として星の数は? 満天の星の数ぜんぶ! ですかね。

乙女の星


2 私の空想シネマテーク

近年はあまり読まれなくなったのですが、フランスにアンドレ・マルローという作家がいました。戦後、フランスの文化大臣もつとめた人物で、評伝的にも若干ながらジャック・タチとクロスする事項があります。そのマルロー氏の示した概念に「空想美術館」というものがあり、日本でも一時期これにならって「私の空想○○○」という言い方が流行したような記憶があります。

こんなことを言い出したのは、このBOX(Blu-ray版)でタチ・アーカイブはほとんど完成したと言えるからで、これに追加するとしたらあとは何なのかなあ、と考えていうちにこの「空想美術館」という言葉が連想されたという次第です。

なにせ「空想」ですから、現実的な障害や、現世的なしばり(版権など)を考慮に入れる必要はありません。それを前提として、最後に勝手な希望を書いてみましょう。

最初はジャック・タチの演技者としての側面。
厳密にいえば、タチの映画出演はBOX収録作品に限られるわけではなく、クロード・オータン=ララ監督による二つの作品にも純粋に役者として出演しています。

ひとつは『肉体の悪魔』(1947年)。タチは兵士の役を演じ、終盤で酒場のシーンに登場します(皆と何やらべらべら喋っている)。ただ出番はほとんどこれだけですから、空想アーカイブには映像クリップみたいな形でこの場面だけを収めておけばOKでしょう(ミシュリーヌ・プレールとジェラール・フィリップには申し訳ありませんが)。

ただしいま一本はそういうわけにはまいりません。『乙女の星』(1946年)がそれで、タチはこの作品ではユロ氏以上にサイレントです。

なぜならここでタチが演じているのは、亡霊というか幽霊というか、要するに半透明のゴーストだからです。この映画でのタチは全編出ずっぱりで、マイムには他の喜劇作品には見られぬ優雅さが溢れています(演技者タチの最高傑作と評する人さえいます)。貴公子のようにスマートなタチを堪能する意味で、こちらは空想アーカイブに全編収録が必要でしょう。

そして忘れてならないのは前回話題にした『イリュージョニスト』。ひとつにはシナリオ作者という資格で、いまひとつは演者の資格で——というよりは、ユロ氏の肖像権とその挙動のコピーライト所有者として、でしょうか。

あ、それと遺作シナリオ『コンフュージョン』の映画化も。タチがメディアの問題を扱ったという点が、非常に現代的な「何か」を予感させます。イオセリアーニでなくとも誰か(日本人の監督さんでも)……

しかし、全てのタチフィルが願ってやまないコレクションの最後の仕上げは、何といっても『プレイタイム』完全版(153分)の蘇生でしょう。今回の映画祭やBlu-ray版BOXのリリースに匹敵する衝撃波が今後あるとすれば、それは『プレイタイム』完全版のリリース以外に考えられません。

何しろ135分版のほうだってプリントを探すのに相当苦労したそうですから、153分版となると何をかいわんやなのでしょう。当時共産圏だったモスクワには存在するのでは、などとタチフィルたちのあいだでは囁かれておりますが、さて現実には一体どんな展開が。

それにしても、見果てぬ夢はどこまで続くのやら……



☆商品情報
『ジャック・タチ コンプリートBOX』 [Blu-ray]
 日本コロムビア / COXM-1094~1100
『ジャック・タチ コンプリートBOX』 [DVD]
 日本コロムビア / COBM-6696~6702
*Blu-rayとDVDでは内容・価格が異なりますのでご注意ください。
 なお本稿では、あくまで[日本版Blu-ray]のほうを扱っています。

(佐々木秀一/執筆)



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プロフィール

タチヨン

Author:タチヨン
日本ではたぶん唯一のファンサイト「ジャック・タチの世界」を運営しています。フィルモグラフィetc.は、そちらをご覧ください。
タチの人生を詳細に描き出した評伝「TATI―“ぼくの伯父さん”ジャック・タチの真実」もヨロシクお願いします。タチ関連の情報があれば、ゼヒお知らせくださいませ。

連絡先:tati@officesasaki.net

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