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ジャック・タチ映画の人名録4 イヴォンヌ・アルノー

タチ人名録4イヴォンヌ・アルノー1

連載第4回 イヴォンヌの謎(イヴォンヌ・アルノー)

ジャック・タチの映画に2度出演した役者の第2弾をと調べはじめたところ、思わぬ難題にぶつかってしまいました。完璧な証明はできていませんが、今日的な論点を孕んでいると思われるので、あえて自分なりの解答をさらしてみましょう……

タチ人名録4イヴォンヌ・アルノー2

~イヴォンヌ・アルノー~
(Yvonne Arnaud/生没年不詳?)

映画『プレイタイム』(1967年)で、ヒロインのバーバラは《ロイヤル・ガーデン》に印象的な緑のドレスで入店します。ドレスはこの夜会のためにホテルで着替えたものであることが、直前のシーンから分かります。アイロンをかけ直したのでしょう、ルームメイドがこの衣装をうやうやしく渡しにくるのです。

「とっても素敵に引き立ちますことでしょう」とか言いながらチップを固辞するこの初老の小柄な客室係を初めて見たとき、「あ、この女性は」と即座にある人物が思い浮かびました(ちなみにこの役はノンクレジット)。『ぼくの伯父さん』(1958年)のアルペル家のお手伝いさん、すなわちジョルジェットがその人で、この二者は同一人物が演じているのだと、体格や仕草から判断したわけです。

愛犬ダキのせいで自動開閉ガレージに閉じ込められたアルペル夫妻が家政婦ジョルジェットに助けを求めるものの、臆病な彼女がセンサーの光線を異様に怖がって、なかなか電磁波ゾーンを横切ろうとしない。パニックに陥り拒絶と躊躇を繰り返すさまは、極端に芝居がかっているぶん諷刺が二重三重に効いていました。

タチ人名録4イヴォンヌ・アルノー3

ところが本稿のために、クレジットされたYvonne Arnaudなる俳優を調べてみたところ、IMDbや海外版Wikipedia等には「1890-1958/フランスに生まれ英国で活躍したピアニスト兼女優」とあります。これが本当なら、1958年段階で撮影は完了していた『ぼくの伯父さん』はともかく、『プレイタイム』のほうには出演できっこありません。

タチはまず自分でマイムをして見せて、それを演者に真似させるという典型的な「振付師」タイプの演出家なので、同じようなお手本で振り付ければ、誰が演じても同じように見えるはず、という理屈は成り立つかも知れません。しかし筆者の目には、2本の映画の2人のメイドはどう見ても同一人物としか思えないのです。

タチ人名録4イヴォンヌ・アルノー4
*「ピアニスト兼女優」のイヴォンヌ・アルノー

筆者が自分の主観のあやふやさを棚に上げかくまで強弁するのには、実はもうひとつ理由があります。2007年にフランスで出版された『エテックス、タチをデザインする』という著作(好著!)の中のある記述を記憶していたからです。

著者はこのなかで、「イヴォンヌ・アルノーなる名をもつ舞台女優」について次のように注解を加えています。

「タチはこの女優に再度『プレイタイム』で協力を仰いだ。イヴニングドレスをバーバラに持ってくるのは彼女で…(中略)…ジョルジェットを演じるためにイヴォンヌ・アルノーは、自分の髪の毛を痛めつけることにも同意した。カラスの濡れ羽色に染めたうえ、はさみと化粧品でわざわざ髪型を不格好に、ばりばりごわごわにセットしたのだ」。

タチ人名録4イヴォンヌ・アルノー5

この記述は、後段が明らかに取材ないし文献参照に基づいている点からも全体の信憑性は高いと思われます。あたまから同一人物と信じこんでいた身としては、IMDbやWikipediaよりも、なおさらこっちの説のほうに信を置きたい。

残された映像画像で見る限り、ピアニスト兼女優のイヴォンヌ女史はさほど小柄には見えませんが、映画のジョルジェットはご覧のとおり小児のような背丈です。またピアニスト女優の主たる活躍圏はあくまでイギリスであり、しかも1947年を最後に映画からは遠ざかっていました。やはりこの人物とタチの映画は無関係で、同姓同名のイヴォンヌ・アルノーさんが2本の映画で2人のメイドを演じた、と見立てるべきではないでしょうか。

なにしろ半世紀以上昔の話。クラシック畑の名ピアニスト兼女優(わが国では「イヴォンヌ・アルソオ」という表記もあり)と、一介の舞台女優が同姓同名の別人であることは、当時なら言わずもがなの事実に属していた。しかし時は経過しデジタル全盛の現代、データベース構築の際に二つの無関係な事項が実体から遊離して結びついてしまい、検索とコピペによりこの誤認が定着してゆく……

以上が筆者なりの推理です。


(佐々木秀一/執筆)

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Author:タチヨン
日本ではたぶん唯一のファンサイト「ジャック・タチの世界」を運営しています。フィルモグラフィetc.は、そちらをご覧ください。
タチの人生を詳細に描き出した評伝「TATI―“ぼくの伯父さん”ジャック・タチの真実」もヨロシクお願いします。タチ関連の情報があれば、ゼヒお知らせくださいませ。

連絡先:tati@officesasaki.net

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